彼女の年齢を聞いて、驚いた。
60歳を過ぎていると言うのだ。
驚いて2度見したら、確かに目元に小さな薄いシワがある。
もしかしたら、本当に60代なのかもしれない...
それにしても、肌の輝きだけではない。
無駄な贅肉がついていない身体はどうだ。
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その女性は、ボランティア活動の会の先輩だった。てっきり40代くらいだと思っていた。
会の帰りにお茶を飲みに立ち寄ったカフェで、彼女の話にすっかり聞き入ってしまった。
まだ「美魔女」などという言葉さえなかった頃の話。
それから折に触れ、彼女には食生活の大事さをいろいろ教わった。
その中でも一番印象に残っている話が、「やせている人がスーパーのレジ待ちのときに、ひそかにやっていること」だった。
やせている人がスーパーのレジ待ちで秘かにやっていること
彼女からの質問はこう。
「スーパーでレジ待ちの長い列ができている時、何をしてる?」
私だったら、帰宅してからの夕食の準備の段取りを考えたり、カゴの中を見て、買い忘れがないかもう一度チェックしたり、そんなところ。
でも、彼女は意外なことを言った。
「スーパーのレジ待ちの列に並んでいる時はね、他の人の買い物カゴの中身を良く見なさい。
もちろん、あまりお行儀の良いことじゃないから、ジロジロ見ちゃだめよ。
でも、どんな人がどんなモノを買っているのか、それとなく観察するの。」
たしかに、買い物カゴの中身からは、その人の生活が垣間見える。
若い独身女性の買い物カゴと、高齢のおじいさんの買い物カゴの中身は違って当然だ。
でも、彼女の言いたいのは、それとは少し違った。
「レジ待ちの人の中で、一番健康そうに見える人を探し出して、その人のカゴの中身を見るの。
そして、一番不健康そうに見える人を探し出して、その人のカゴの中身も見るの。
それを繰り返すうちに、どんな食べ物がどんな人をつくりだすのか、だんだんわかってくるから。」
そう言われて、とても納得した。
当時から、いろいろなメディアで健康情報はたくさん出回っていた。
でも、身体に良いものを今日食べたからと言って、明日すぐに健康になる訳じゃない。
食べ物は、ゆっくりと身体をつくっていく。
だから、食の健康情報はどれもあやふやで、結局のところ何を食べたらいいのか迷ってしまう。
でも、言われて初めて気がついたけど、スーパーのレジ待ちの列では、人体実験の実例(!)が見られるんだ。
やせている人が食べるもの、食べないものとは?
では、彼女はいったい何を食べているの?
まだ、糖質制限の話もなく、肉や油が身体に悪いと言われていた時代。
「箱や袋に入った食品は、できるだけ食べないようにしているの。
工場でつくられて箱や袋に入った食品は、「死んだ食べ物」
肉や魚、野菜や果物は、「生きた食べ物」
身体をつくるのは「生きた食べ物」なのよ。」
ずいぶんとザックリした話だけれど、つまりは「加工食品はできるだけ避け、生鮮食品を食べる」ということだった。
肉・魚・野菜を加工する過程では、当然ながら、塩・砂糖・油が加えられる。
美味しくなるからだ。美味しくなければ、加工食品は売れない。
たっぷりの生鮮食品を食べ、加工食品を避けることで、60歳を過ぎても驚異的な若さを保っている彼女の言うことには、ものすごく説得力があった。
彼女は白米を食べていたので、今で言う糖質制限とは言えない。
でも、加工食品を避けることで、結果的に大幅な糖質制限になっていたのだと思う。
それからは、レジ待ちの列で、私も他の人のカゴの中身をそれとなく見るようになった。
スーパーだけでなくコンビニや外食店でも、どんな人がどんなものを食べるのかを無意識のうちに見てしまう。
彼女の言っていた「死んだ食べ物を避け、生きている食べ物を食べろ」という言葉は、本当にそうだと思う。
やせている人はむしろ食べることを楽しむ
そして、彼女は食べることが好きだった。
彼女の持ってくるお弁当には、いつも丁寧につくられた料理がはいっていて、見るからに美味しそう。
彼女は若さを保ち、やせていたけれど、食べたいものを我慢していたという印象はない。
むしろ、その逆だ。
丁寧につくった料理をゆっくりと味わって食べていたら、一つ一つの食材の味にも敏感になって、少しの食事でも十分に心ゆくものになるだろう。
「あれも食べられない、これも食べられない」というダイエットでは、短期的には続けられても、長い間続けるのは難しい。
美味しいものをいただけば、そんなに沢山食べなくても満足できる。
忙しい日々が続くと、つい食事の支度がおざなりになってしまうことがあるが、そんな時はいつも彼女のことを思い出す。
食を大事にして楽しむことが、太らないための最大の秘訣なのだと思う。